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ノベルゲームをアニメ化するのが困難な理由|アニメ版「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」感想の感想

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アニメ版「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」を見た。

あれこれと手が回らずリアルタイムでの視聴はできなかったけれど、Amazonプライムで最終話まで視聴。

 

原作が好きだったので、アニメ化されたことが純粋にうれしく、子どもの独り立ちする様を見守るがごとく、最後までニコニコうなずきながら見てしまった。

 

でも一方で、ノベルゲームをアニメ化することの困難さも感じずにはいられなかった。

 

※原作の感想については以前に書いた。PCゲーム界、往年の名作。

 

率直に言えば、アニメを見た原作ファンは、冷や水を浴びせられてしまったのではないかと思う。

 

自分で主人公を操作して、謎に立ち向かい、選択肢を選んで、何度も失敗して、ループして…。

苦労して手に入れたものほど尊いと感じてしまう人間の性が、ゲームシナリオを実際以上に素晴らしきものに感じさせていることを、僕は認めざるを得なかった。

 

亜由美さんを助けるために何度もループする場面は、アニメだとほんの数分で処理されてしまう。そこにさしたる感動も熱もない。

一方、ゲームだと亜由美さんを助けるまでには、軽く数時間はかかる。胸に抱く亜由美さんの重みまでもがテキストを通じて感じられるようだ。この差は一体…。

 

物語構造の質そのものは変わらなくても、そこに投資した時間の重み分、同様の体験であっても、アニメのほうが遥かに軽くて無価値なものに感じてしまう。そして、ゲームでの体験のほうが、遥かに尊いと感じてしまう。

ゲーム的にはOKなのだが、これはアニメ化するにはやっかいな事実だろう。

 

わかりやすく言うと、ロープウェイで山頂に行くのと、自分の足で麓から登頂するのとでは、後者の方が遥かに大きな達成感が得られるのと同じ仕組みだと思う。

 

原作のYU-NOで言えば、何度も繰り返しプレイすることは徒労だが、その苦しさが主人公への感情移入を強め、目標達成(亜由美さんを助ける、澪を助ける、など)の充実感を強めていたと言える。

 

Amazonレビューには、原作を知らない人たちの容赦ない書き込みが氾濫していた。

 

・ジオテクニクス内に簡単に潜入できすぎるのは不自然

・アナウンサー兼産業スパイという設定は無理がある

・絵里子先生の服装が変すぎる(ボディコンとかありえないw)、

・異世界にいったあとのんびり生活してるのはおかしい

などなど

 

せやな、と思った。わりとまじで。

ゲームに感動していた頃の僕は、夢でも見ていたんだろうかとすら思った。

 

こういった指摘は、原作を遊んでいたときにはほとんど気にならなかった。

ゲームの方では辻褄があっていたかと言われるとまったくそんなことはなく、やはりおかしかったのだろうけど、完全に流してしまっていた。疑いの目で読んでいなかったので、流れのなかで何となく受け入れてしまっていたのだと思う。

 

アニメは三人称視点で描かれるから、一歩引いたところから状況を眺めることになる。粗が見えやすい。ところがゲームだと、視点が一人称で自分=主人公として物語は進んでいく。

ボタンを押すことで、テキストが流れて物語は先に進む。

ところどころ選択肢を選ぶことで、さも思い通りに主人公を動かせているかのような錯覚に陥る。

 

主人公が疑問に感じなければ、自分もそっちの思考に引っ張られて疑問を感じなくなっていく。主人公の見たものしか、自分も見れなくなっていく。

どんどん視野が狭くなってくる。

やがて、プレイヤーが主人公を操作するのではなく、主人公にプレイヤーが操作され始める。

 

文章にするとなんだか気持ち悪い状況だけど、ゲームにおけるフロー状態のようなもので、こうなっているときが一番ゲームを楽しんでいるときなのかもしれない。

 

 

コミックのアニメ化は比較的上手くいきやすい。

それは、視点がどちらも三人称で描かれたものだからではないか。

 

ところがノベルゲームは、ほとんどが一人称で描かれている。

一人称を三人称に直すと、根本的に手ざわりが変わってしまい、作品性が失われてしまう。

加えてゲームには、コントローラーを通じた「操作」という能動的なステップもあり、100%受け身のアニメではその体験を再現することができない。悩ましい。

 

そういえば、以前に同じくノベルゲーム原作のアニメ「Air」の感想を書いたけれど、Airのアニメは違和感なく見れた気がする。

あれって、原作が一人称に見せかけて実は三人称として描かれた物語だからなのかもしれない…。

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