「仕事を任せる」という大仕事。
読みました。
自分でやったほうが早いけど、長期的に考えると、メンバーに仕事を教えてやらせていくべきという考え方。納得する面もあるものの、なーんかピントがずれてるなぁと思ってしまいました。
この記事を読む人が抱えている本当の悩みって、丁寧な引き継ぎフォーマットをつかって、懇切丁寧に指導すれば、誰でもできるようになる仕事についてではなく、もっと複雑で臨機応変さの求められる仕事についてなのではないでしょうか。
つまり、
少なくとも相手が一回目の仕事を終えるまでは、手厚くサポートすることです。定期的に相手の仕事の進捗をチェックし、質問にも快く答えましょう。間違っても、「質問しづらいなぁ」と思わせるような態度を取ってはいけません。
こんなことは、百も承知だけど、実態は一回だけ手厚くサポートしたところで習得なんてできっこない練度の必要な仕事が多過ぎて、身動きがとれなくなっているのだと思います。
僕は文章を書くのが仕事なので、同じような状況に置かれたときは、徐々に関与度を減らしていくというやり方をとっています。最初は、打ち合わせから取材から広告の方向性の決定から、文章の枝葉末節にいたるまで後輩を手とり足とり指導します。繰り返し案件に携わる中で、その関与度をちょっとずつ減らしていく作戦です。
徐々に関与度を減らすことは、後輩にも伝えています。そうすることで、先輩に手助けしてもらいながらも、少しずつ自分のできる範囲が広がっていることを実感してもらい、モチベーションを維持してもらうことができます。
後輩に内緒で、僕の側でも粗々の原稿を用意しておいて、万が一の時にそっちを手直しして出せるように備えることもあります。当然ながら、非常に時間が喰われます。しかもその労力は、表だって報われません。
でも、これはしょうがないことです。「任せる=仕事を減らす」のではなく、新人教育というタスクをこなしているわけですから。「取引先に迷惑が出ないように、新人に実戦経験を積ませる」という、ある意味で、非常に高度な仕事です。言うなれば「仕事を任せる」という大仕事をこなしているのです。
元記事では、この教育を、さも"俗人的な素養や手際"かのようにハウツー的に語っていますが、それは大きな間違いです。本来は、その教育に際してロスする時間もきっちり認めて、無理のない環境を会社側が作ってあげるべきです。
元記事の最後の見出しに「自分でやらないのは、未来への投資」とありましたが、この投資は誰とっての投資なのでしょうか。新人教育はあくまでも、会社のためにやるものであって、その人が将来、働きやすい環境を作るために個人的にやるものではないはずです(個人的に取り組むことで、自身が成長できる点について否定はしませんが)。
丸投げをしたくてしている先輩なんて少数派だと僕は思っています。
ほとんどの人は、新人教育という大仕事にまわせるだけの余力がなく、しぶしぶ「自分でやる」か「丸投げする」かを選ばせられているのではないでしょうか。