「仕事」と「成長」は、ある程度切り離して考えた方がいい。
特定の分野を究め、その深い専門知識と経験・スキルの蓄積を
自らの軸に据えつつ、さらにそれ以外の多様なジャンルについても
幅広い知見を併せ持っている人材のこと。
こういう題材について考えるとき、
おそらく社会人としてものすごく残念な発想だが、
僕はオンラインゲームを思い出す。
©GungHo Online Entertainment, Inc
僕が昔やっていたのは、ラグナロクオンラインという、今ではパズドラですっかり有名になったガンホーが運営しているオンラインゲーム。
レベルが上がるとステータスポイントが手に入り、任意のパラメーターに割り振れるゲームだ。
このゲームにおいて、キャラクター育成の要諦は、一つのパラメーターに特化させることだった。
※たとえばマジシャンならINT(魔法攻撃力)を上げるとか。
※一極集中で鍛えないと終盤のモンスターに太刀打ちできず、詰んでしまう。
いわゆるT型人材に踏み込めるのは、レベル80(99が最高)くらいから。現実社会で言えば、ベテランの域に達したところで、ようやくI型かT型かの選択肢が現れるイメージ。
前置きが長くなってしまったが、いまの世の中でいうと、中堅の段階でシフトチェンジして結果、T型崩れになっている人が多いのではないか。専門性が第一線級に達する前に、あれもこれもと横に展開してしまってはいないだろうか。
確かにゲームをプレイしていてもそうだった。いま自分が主戦場にしているフィールドだけを見て、やれパワーが足りない、やれスピードが足りないと、場当たり的にステータスUPしていると、中途半端なキャラクターが出来上がり、終盤のフィールドで戦うことができないキャラに育ってしまった。
自分の戦いたい最終フィールドはどこか。どの敵を倒したいのか。きちんとゴールを見据えて育成した者だけが、終盤の敵にも立ち向かえるキャラクターを育成できるのである。
まあ、現実はゲームほど単純じゃないから、レベルの上限もステータスポイントの伸び率も一律ではなく不公平だ。人は才能も家柄もバラバラで生まれてくる。
でもだからこそ、自分が凡人であればあるほど、無駄に振れるポイントは1ポイントもないのだと肝に命じて、日々の仕事で経験値獲得に励むべきなのだと僕は思う。
だから、「仕事」と「成長」は、ある程度切り離して考えた方がいい。自分の専門スキルが、たとえ現在の仕事に対してオーバースペックだったとしても、そこで研鑽をやめてマルチな成長を志向することは、一概に正解とは言えないのだ。
大切なのは、自分が最終的に目指すフィールドで求められる専門性がいかほどのものか見失わないこと。ただちに評価を得ようとすると、一見、非効率に思えるオーバースペックな部分を、丹念に磨き続ける勇気と意志こそが、次のステップへの近道になると心得ることなのだ。
ちなみに、僕の知るT型(に見える)人たちは、専門分野の仕事をバリバリこなしながら、趣味や生活習慣、交友関係など、生活のすべてを上手に使って、Tの左右に伸びた部分を伸ばしていっている人が多い。
転んでもただで起きないというか、何でも血肉にできるというか。まあ、とにかくそんなタフな人材だけが、T型人材とやらになれるのだと思う。