話題作りのために、美人の人事担当者を登壇させる企業説明会について思うこと。
美人が説明会を開催するとうたって集客していたら、ネットで批判されてイベントが中止になってしまったらしい。
単なる話題づくりなのだから、いちいち目くじらたてなくてもよさそうなものなのに。めんどくさい世の中になったもんだと改めて思う。
以下、思ったことを書く。
肉食系の人材を、企業は渇望している
美人担当者の説明会参加企業は、プロトコーポレーション、ネットプロテクションズ、ヴィックスコミュニケーション、アイ・エム・ジェイの4社。
IT系だったり、成長中の新興企業だったり、いかにもグイグイいける人材を求めていそうな企業ばかりだ。美人が説明会をやると聞いてミーハー気分で集まってくる、ちょっとおバカだけど行動力のある学生を求めているのだろう。
地頭がそこそこ良くて、エネルギッシュで、でも品性がないので超大手企業には内定をもらえないような学生が、この辺りの企業にとっては草刈り場なのだと理解できる。
ただし、炎上する可能性を察知していたにも関わらず、中止したのはどうかな。炎上して中止にするくらいなら、最初からこんな危ない橋は渡らないのが得策だったと思うけど…。
セクハラじゃなく、単なる企業努力という現実
説明会でなくとも「美人がいたら求人に写真載せてちょうだい」は、求人業界で働く者の常套手段だ。
なにせ美人には広告価値がある。セクハラと言われようがなんだろうが、美人の存在は集客に多大な影響を及ぼしてしまうのだからしょうがない。営利組織としては、美人カードを切らずにまるまる捨てるのは相当惜しい。
もはや、この説明会が不謹慎というより、人間とはそんなものだという世界観でしかない。
女性が多い薬剤師の転職サイトに、こんなものもある。
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男性だけがだらしないわけじゃなくて、女性もイケメンには弱いのだ。
それに、セクハラへの反応が過剰になりすぎると、女性活躍の推進にも支障が出ると思う。
今回の件も、当事者からすれば大きなお世話だったんじゃないのか。
本人たちはプチタレント気分を味わえて、楽しんでやっていたんじゃないかなぁ。企業風土を慮ると、そんな気がしてならない。
会社=辛気臭い雰囲気を想像する人たちには理解不能だろうけど、イケイケのIT系企業で働く女子たちは、セクハラに守ってもらう必要があるほどヤワじゃないと思う。
美人だけが取り柄の人は、どうやって生きてけばいい?
ところで、極論だが、容姿の良さそれ一点を武器に人生で成功を収める人はいるだろう。今回の件は「美人」ではなく「ちょうどいい感じの美人」らしいが、自らの容姿を活かして職責を果たすことに何の問題があろうか。
会社から強要されて本人が嫌がっているのなら問題だが、そうではないなら「ちょうどいい感じの美人」の肩書をつけて表舞台に立つことは、単に自分の手札を切る行為にすぎず、競争社会で勝ち抜くための立派な自助努力だと考える。
しかしネットで炎上したことにより、ちょうどいい感じの美人たちは、表舞台に立つ機会を奪われてしまった。
念のため書いておくが、件の人事の方々をバカと言っているわけではないことをご理解いただきたい。
仮に美人しか取り柄のない人がいたとして、セクハラを理由に美人を売りにすることができない社会だったならば、その人の活躍の機会を奪うことになってしまう、という話だ。
企画に哲学がないから、炎上した
いちおう書くと、ぼくは今回の説明会の企画には反対。
野次馬としては興味津々だけど、採用を仕事にする者としては、まったく賛同できない企画だと思っている。
たしかに美人を広告塔にするのは効果が高いし手っ取り早い。それは事実なのだけど、事はそう単純には運ばない。
この手の企画を考えるときに意識するのは、「その企画をやる意味」。つまり、今回の「ちょうどいい感じの美人」というのが、その企業の文化や仕事内容などを表現するにあたって、必然性があるや否やという視点を求めたい。
近頃、採用環境が厳しいせいで、話題性を重視した奇策にはしる企業が増えた。他社で成功した事例を横展開するコンサル会社も多い。ただ、そんなハリボテの企画では真の意味で学生を惹きつけることにはならないし、熱意あるエントリーも増えないと思う。
今回の一件を遠巻きに見ている感じでは、ちょうどいい感じの美人と企業活動との間に、特別な接点はないように思える。
企業は学生に「自己アピール」を求める前に、自らがまず説明会というコンテンツを自分たちらしく表現してみせるべきではないだろうか。
学生からどう映っているのか分からないけれど、美人が説明会に登場というアイデアは、学生がバイトリーダーを頑張ったとESに書くのと同じくらい、ありふれたチープな発想だ。