タバコ依存を、はじめて怖いと思った。
ぼくはタバコを吸わない。
でも、友達にはけっこう喫煙者が多い。
飲みにいくと、みんな美味しそうにスパスパすっている。お店をハシゴするときに、タバコを買うためコンビニに立ち寄ることも多い。
お酒を飲むといつもより吸いたくなるようだ。
そんなわけで、タバコに慣れっこのぼくは、目の前でスパスパと吸われても特に何とも思わない人間だ。(他人の歩きタバコにイラっとすることはあるが)
でも、この前、初めてタバコをすごく怖いと思ってしまった。
それはコンビニで買い物をしていたときのこと。
腰の曲がったおじいさんが店に入ってきた。
おじいさんは店に入るなり、ヨロヨロとレジに歩いていき何かを注文する。
「〇×$*@}¥%&+!」
はっきりいって、何言ってるかわからなかった。
スマホをいじりながら散漫な状態で聞いたからだと思ったけど、店員さんも聞き直していたから、やっぱり聞き取りにくかったんだと思う。
聞き取ってもらえないことに、おじいさんは苛立った様子で、さきほどよりも強い口調で何かを呟く。
歯がないせいか単純に歳のせいかはわからないが、ぜんぜん呂律がまわってない。
フムフムとうなずく店員。
店員さんすげーな。あれで聞き取れたのか。
さて、みなさんお待たせしました。
ご想像の通り、店員さんが差し出したのはタバコだった。
じいさんは銘柄しか言わなかったのだろう。
心優しき店員さんはライトな方を差し出したところ、ニコチン量の多いものに交換していたようだ。
おじいさんは、おぼつかない所作でお会計を済ますと、店のそとにヨタヨタ歩いてゆき、タバコを吸い始めた。
足か腰か、その両方か、立っているだけで重労働といった風体なのだが、寒空の下、タバコを吸う。
その満ち足りた表情といったらない。
背筋がぞっとした。
歩く姿、話す姿、あきらかに半死半生のじいさんが、うまそうにタバコを吸っている。
その人は、もう何十年もタバコを吸っているのだろう。
年老いて体がボロボロになっても、まだタバコを欲しているのだ。
そもそも、足を引きずりながらも、必死になってコンビニにタバコを求めてきている状況が、もうすでに怖い。
100%おせっかいだが、タバコより必要なものは他に山ほどありそうな老人が、それでもタバコを優先している状態に、依存症の末路を見た気がした。
これ、お酒も似たような人をけっこう見かけるので、自分もほんと気を付けないと。
ヨボヨボ歩いてワンカップ買いに行くような老人にはなりたくない。