PS4「祝姫」感想|開始3分で、ヒロインが電車に飛び込み自殺の衝撃。
「ひぐらしの鳴く頃に」で、おなじみの竜騎士07氏の作品。
PS4にしぼってノベルゲームを探していたら偶然みつけました。
B級ホラー好きにはたまらん作品です。
- 開始3分で、ヒロインが電車に飛び込み自殺
- バラバラのグチャグチャに…
- 延々と薄暗い学園生活が描かれる
- 徐々に明かされる真相
- ホラーにしては珍しく、整合性がとれた優等生シナリオ
- 後半はうって変わって、明るい夏休みの日常が描かれます
- PS4版には、超絶うつ展開の雛形先生の追加シナリオがあります
開始3分で、ヒロインが電車に飛び込み自殺
まぁ言うても美少女のでてくるノベルゲームですよ。
主人公がいてヒロインがいて、こそばゆい学生生活が描かれていくなかで、徐々に日常が非日常に侵食されて…。
そんなお約束ホラー展開をぼんやりと想像していたら、見事に予想を裏切られましたね。思っていたような、のんびりとした展開ではありませんでした。
冒頭。
幼馴染のヒロイン「椿子」が主人公を駅で待っています。
そのとき、駅で主人公を待つ椿子に謎の女の会話が聞こえてきます。
「駅ってさ。何気に超メジャーでポピュラーな自殺スポットだと思うんだよね」
自殺を勧める女の声に誘われるままに、椿子はフラフラと駅のホームへ。
おいおい嘘だろ…、とドン引きする僕を置き去りにして、椿子は線路にダイブ。
バラバラのグチャグチャに…
バラバラのグチャグチャになって、電車が上を通過するたびにちぎれた肉片がパキぽきりと鳴って快感を感じるふへひひへ、という謎テキストに恐怖しました。
これは紛れもなくそっち系のあかん作品だ。と思って、よくよくパッケージをみたら、バイオレンス過ぎてR18でした。なるほど。
文章だけでここまで胸糞悪くなれるとは…。
でもこの感覚、長らくノベルゲームから距離をおいていた身には懐かしくもあります。ノベルゲームはやはりこうでなくては。
いきなりヒロインが自殺…、どうなるんだこのゲーム…と途方に暮れかけた直後、待ち合わせ場所に現れた主人公が「大丈夫?」と椿子に声をかけて、飛び込み自殺はただの白昼夢だったことが判明します。
この演出によって「あの白昼夢は何だったのか、何を示唆しているのだろう」と、一気に物語に引き込まれることになりました。
延々と薄暗い学園生活が描かれる
クラスメイトとのギャグを交えた快活なやりとりも描かれますが、割合でいえば学校の休憩時間くらいの尺しかないです。
だいたいの時間は薄暗ーい、怪談めいた話が続きます。
教室で楽しい会話をしていたら、日本人形を抱いた不気味なJK(黒神さん)が入ってきて雰囲気が一変。
転校生の主人公は事情がよく分かってないけど、クラスメイトはみんなシーンとなるんですね。なんでも黒神さんに話しかけると呪われるらしい。
現実なのか妄想なのかよく分からない、薄気味わるい描写も多いです。
精神が病んでいる人の頭の中を描いたような話が続いたりもするので、読むのがきついと感じる人もいそう。
不良が女の子を虐げて奴隷のように扱う、ただただ胸糞わるいだけのシーンもあります。
それぞれのヒロインのおかれた状況も悲惨の一言です。彼女たちの境遇に共感すればするほど、憂鬱な気分になります。
これだけ聞くとめちゃめちゃ酷いゲームみたいに聞こえますね。
実際そうだと思います。
読めば読むほど気持ちが沈み、よく分からないことだらけになって、不安にさせられます。悪夢のようなゲームです。
しかし、その不安を晴らしたくて急き立てられるように読み進めてしまいます。この不快感こそ、ホラー好きが求めるものです。
作品全体を覆う、ジメジメした雰囲気の居心地よさといったらありません。
徐々に明かされる真相
日常のなかで、突如としてはじまる悪夢のような白昼夢。
この原因がストーリー中ほどで明かされます。明かされるんだけど、それでは説明のつかない謎もいくつか残ります。
1本の線ではなく、大きく2本の線が絡み合って、そこに各ヒロインの抱える問題という第3の線も絡み合うことで、最後まで飽きのこない複雑なシナリオになっています。
ホラーにしては珍しく、整合性がとれた優等生シナリオ
ホラーにA級なしと言われるように(勝手に言ってるだけですが)、恐怖系の作品にはたいていまともなオチがありません。ところが祝姫は大きく破綻することなく、きれいに物語が収束していきます。
展開そのものはご都合主義っぽいけれど、謎の部分の種明かしは筋が通っているので読後に納得感があります。呪いと煤の関係を紐解く過程で、シナリオに厚みが生まれたようにも感じます。
また、その関係性の複雑さから、前半では容易にその因果関係を紐解くことができない物語構成になっているのも秀逸でした。
後半はうって変わって、明るい夏休みの日常が描かれます
本作のテーマである「呪い」についての謎が解き明かされたあと、後日談的に楽しい夏休みの様子が描かれます。
少し前まで、それぞれのヒロインが悲惨な環境におかれていたことを思えば、ベタな日常描写ですら貴重でかけがえない時間に感じられるから不思議ですね。
陰惨な描写から解放された反動で、凡庸な日常描写が実際以上に楽しく感じられたのは新鮮な感覚でした。そして何よりの驚きは、それらがすべて計算づくの演出であった点でしょうね。あぁそういうことか…と。
生死をさまよう緊張感あるシナリオから一転、夏休み描写の凡庸さに退屈を感じたとしても、最後にはその退屈さにすら価値を感じずにはいられない展開が用意されています。
ノベルゲームのお約束に慣れている人ほど騙されるんでしょうね。これは。心憎い演出でした。
PS4版には、超絶うつ展開の雛形先生の追加シナリオがあります
保健の雛形先生のシナリオです。
保健室の先生⇒追加シナリオ⇒しかも祝姫はR18⇒エッチな展開が!?
なんてことは1ミリもなく、本編シナリオを遥かに凌ぐ胸糞悪さが待ち受けています。
先生が生徒たちに陰口を叩かれまくったり、トラウマになる酷さの壮絶なイジメが描写されます。
改めてテキストを読みかえすだけでも、負の感情が伝染してきて辛いです。
僕も軽度ながら似たような症状が昔からあるので、他人事に思えず感情移入して読んでしまいました。しんどくなってしまい、途中読むのがいやになったりもしました。
ただ、シナリオ自体はよくできています。
雛形先生はとある問題を抱えており、その問題に対して機転を利かせて賢く対処するのですが…、その対処法には致命的な欠陥があるんですね。
その欠陥がもたらす最悪の展開には、とても納得感を覚えます。ただまぁ、納得せざるを得ないからこそ一層、胸糞悪い思いをさせられるのですが…。
救いは、キュートキュートな雛形先生の高校生バージョンが見られること。
そして、ちゃんと救いのある結末が用意されていること。でしょうか。
追加シナリオのためだけにPS4版を買うのは、さすがに厳しいかもですが、これから購入する人は、せっかくなのでPS4版がおススメです。
プレイ時間は追加シナリオ入れて15~20時間ほどでした。
土日にガッツリ引きこもって遊ぶには、ちょうどいいボリュームです。
時間ねーよという方は、こちらをどーぞ。
つ漫画