減らせる残業。減らせない残業。
残業を減らすために生産性の向上をお題目に掲げる企業が増えてきました。
しかし、早帰りDAYを作るなどして一時的に残業を減らせても、結局は、ジリジリと元の労働時間に逆戻りしていく企業は多いと思います。
それは世の中に、「がんばれば減らせる残業」と「がんばっても減らせない残業」があるからです。
残業の原因には、大きく「自分都合」「会社都合」「顧客都合」の3つがあり、その中で個人のがんばりで削減できるのは、自分都合の残業だけなのです。
自分自身が原因の残業
- 仕事のスキルが足りない
- 効率的な仕事の方法を知らない
- ダラダラ残業してしまう
- 残業代が欲しい(もらえる会社の場合)
自分に原因がある残業は、比較的簡単に解消できます。
仕事のスキルが足りない
仕事の習熟にともない緩和される残業です。
効率的な仕事の方法を知らない
こちらも同様。
仕事の習熟にともない緩和される残業です。
ダラダラ残業してしまう
意図的な残業については、自分の意識次第ですぐにでも解消できます。
残業代が欲しい
これは自業自得。
残業せずとも稼げるように、スキルアップしてベースの収入UPをはかるしかありませんが、辛いときに帰る自由は確保されているため、心身の健康を気遣う上では特に問題はないと言えるでしょう。
会社が原因の残業
- 効率が上がったら、早く片付いた分だけ追加の仕事をアドオンされる
- 「残っている人=頑張っている」評価軸がある
- 定時以降に会議などが設定されている
- 成果主義による過度な競争がある(勝つために労働時間は自ずと増える)
- 会社のビジネスモデルが崩壊している(儲かってない)
これはなかなか解消が難しい残業です。
あなたが役職者なら社内体制の改革によって解消できる残業もあるかもしれませんが、一般社員であれば転職するしか解決の道はなさそうです。
効率が上がったら、早く片付いた分だけ追加の仕事をアドオンされる
わんこ蕎麦のように、延々と仕事のお代わりがくる職場です。
ガンガン値引きして仕事を取ってくるタイプの企業に多いパターンです。
他社と差別化ができず質より量になっている企業は、この状況に陥りがちです。
仕事が早く終わったらそのぶん仕事量を増やされるのは、ある一定の年次までは仕方ありません。
ただし、会社によっては永遠に目標アップし続けるところもあるので注意が必要です。
外回り中にサボるサラリーマンがいるのは、こういった働き方を強いる企業があるためです。
どうせ帰れないから間でこっそり休憩して帳尻を合わせるしかないのです。
「残っている人=頑張っている」評価軸がある
評価者が古いタイプのモーレツ社員で、一番早く出社して一番遅く帰ることを美徳としているときに、この地獄は出現します。
マネジャークラスが暴走しているだけならば、異動やその人の退社により改善の可能性はありますが、役員クラスや社長がガンバリズム体質の場合は改善の可能性はありません。
この手の企業には、退職社員が労基に密告して査察が入ることもありますが、1ヶ月ほどピタリと残業が禁止されたのち、ほとぼりが冷めるとまた残業地獄が再スタートします。
成果主義による過度な競争がある(勝つために労働時間は自ずと増える)
単純な成果主義は残業を無限に増やします。
効率を無視して、最終の成果(たとえば売上数字)だけで評価するからです。
150時間で100の成果と200時間で101の成果なら、後者のほうが良くやった!と評価されるわけです。
こうした環境下では、皆がいっせいに残業を止めない限りは、残業がなくなることはありません。
しかし仮に皆がいっせいに残業を止めたとしても、生存戦略として長時間労働を選択する労働者が現れてしまいますので、その人たちの上げる成果のベースにつられる形で、他の人たちも結果的に労働時間を増やさざるを得ないでしょう。
会社のビジネスモデルが崩壊している
起業したばかりの社長が24時間がむしゃらに働いて会社を維持させるように、全社員が死に物狂いで働いて、どうにか会社が倒産せずに生存しているパターンです。
さらにブラック度が高まると、営業成績の悪い社員は給与を天引きされたりもします。
コンビニや飲食チェーンもこの傾向があります。
店長が体を壊すくらい店に張り付いていることが、ある意味、想定されているかのような人員配置が行われています。
たとえば、お店に社員一人しかおらず、あとはアルバイトしかいないとなれば、管理者たる社員は、休みを取るのが非常に難しくなるのは想像に難くありません。
顧客が原因の残業
- 遅い時間に仕事を依頼して、超早い仕上がりを要求される
- 取引先の営業時間が夕方~深夜にまたがっている
これも解消が難しい残業の原因です。
ただ、自分で営業先を選べる一部の人にとっては、力業で解消できる可能性もあるでしょう。
遅い時間に仕事を依頼して、超早い仕上がりを要求される
受注生産型の仕事をしている会社の多くは、このパターンに当てはまります。
問題となった電通のような広告業界はまさにこのパターン。
予め作っておくのではなく、クライアントの要求を受けてから制作が始まるため、顧客が求める納期によっては無理なスケジュールを受け入れざるを得なくなります。
1周まわって工場のように24H稼働レベルになれば、夜勤はあっても労働時間的にはそれなりに規則正しくなることもあります。
取引先の営業時間が夕方~深夜にまたがっている
たとえば業務用の冷蔵庫を扱う企業を想像してみてください。
営業マンの勤務時間帯は9~17時かもしれません。しかしその冷蔵庫を使用するお客様には、24時間営業店がたくさんあります。
営業中に冷蔵庫にトラブルが起こったら、営業マンに連絡が入る可能性があります。
(会社によっては専門のサポート部隊が対応してくれることもあります)
また様々な業種をクライアントに持つ、人材ビジネスや広告業もこのパターンに陥りがちです。お客様が多様ということは、早朝から深夜まで、何らかのお客様が営業中であるということ。
相手の時間帯に合わせて商談をしたり連絡を受付たりしているならば、延々と働く羽目に陥ります。
ビジネス書を読んで解決できる残業は、自分が原因の残業だけ
ビジネス書などで語られる仕事術が解決しているのは、ほとんどが「自分」に原因がある場合の残業の話です。
この点については相当に議論されつくしており、一般にも浸透してきています。
ひと昔前に比べると、仕事を効率的にこなす人は確実に増えました。
ただ、問題は2つ目と3つ目。
一般の雇われている人には、どうすることもできない問題ばかりです。
身もふたもない話ですが、6時間で10の成果を上げる人が12時間働けば20の成果を上げるのです。
経営者からすれば、疲れて少しくらい効率が落ちたってかまいません。
極端な話、12時間働いて11の成果でも経営者的には「1」儲け。
サービス残業が蔓延する世界では、この地獄の計算式が成立してしまうから、残業はなくならないのです。
顧客事情による残業も、多くの場合は会社のビジネスモデルが原因なのであって、これも労働者にはどうにもできません。
生産性UPのビジネス書は、あくまでも「仕事を効率化する=仕事がデキるようになる」ための本であり、生産性がUPした結果、残業がなくなるかどうかは、あなたの所属している企業や組織次第ということなのです。