「グループディスカッションでは、発言して目立て!」と、的外れな攻略法が信じられている理由。
大手企業を中心に、多くの企業の選考で取り入れられているグループディスカッション。
大勢のエントリー者を効率的にふるいにかけられるため、就活生に人気のある企業でよく取り入れられています。
このグループディスカッションを通過するために、よくアドバイスされるのが「印象に残るようにたくさん発言すること」です。
でも、実際はこの通りにしたから、必ずグループディスカッションを通過できるとは限りません。それどころか、アドバイスを信じて無理に発言を増やそうと空回りして、逆に選考に落ちる可能性さえあるのです。
では、なぜそんな誤解を招くようなアドバイスが、世間には出回っているのでしょうか。
- グループディスカッションを実施する企業の狙い
- 企業は、学生のどんな行動から、自己認知力を見抜いているのか
- 発言量は、多ければ良いものではない
- 面接官のスキルの低さが、結果を捻じ曲げる
- 実態を知った上で、どう対処するかが重要
グループディスカッションを実施する企業の狙い
その答えを理解するためにはまず、そもそも企業がどんな狙いでグループディスカッションを行っているのかを知ることが重要です。
単に学生の「素」を見たい、といった理由からグループディスカッションを行う企業もありますが、本来の狙いは、学生の「自己認知力」を見ることです。
自己認知力とは、自分で自分のことを理解する能力のこと。
たとえば、怒りっぽい性格の人、せっかちな性格の人、いますよね。
でも自分で自分の性格に気が付いていれば、人前ではそれを抑えることができます。ようは大人としての振る舞いができるということです。
企業では自分の強みと弱みを自覚して、チームワークを発揮することが求められます。集団のなかで自分の役割を見つけて、その役割を果たしていくためにも自己認知力が必要なのです。
企業は、学生のどんな行動から、自己認知力を見抜いているのか
ディスカッションをする際、学生はグループ内でそれぞれに役割を果たすことになります。
グループをまとめるリーダー。
議論の内容を書き留める記録係。
時間をはかるタイムキーパー、等々。
これは最初に役割をすべて決めてしまうこともあれば、記録係以外については話し合いの中で、徐々に暗黙の了解として決まっていく場合もあります。
ここで、「リーダー役をこなすと企業ウケが良さそうだ」と思って、無理に議論をまとめようとして失敗する学生がいます。
まわりの人が納得していないのに、無理に話をまとめようとする学生の姿は、企業にどう映るでしょうか。
自分勝手に見えるはずです。
自分の置かれている状況を理解せず、リーダーという役割に固執するその姿こそが、自己認知力の低さを物語っています。
1対1の面接では上手く取り繕えても、ライバル達と同席して議論するグループディスカッションでは、学生の本質が露呈します。
上手にリーダー役をこなす人が同じテーブルにいたとしたら、周りの学生は「この人が受かって、自分は落ちるかも!」と、焦って思わず「素」が出てしまうんですね。
自分ができていないことに自分で気づけない人は、「成長する可能性が低い」と判断されます。
新卒採用はポテンシャル採用ですから、成長の可能性が低いと判断されるのは致命的です。
多くの企業が選考にグループディスカッションを取り入れるのは、自己認知力の有無を通じて、学生のポテンシャルを判断できるからなのです。
発言量は、多ければ良いものではない
ここまでの話を総合すれば、いたずらに発言してもNGということになります。
実際そうです。まったく意見を出さないのは問題外としても、時間内ずっと意見をいいっぱなしの人は受かりません。
相手の意見を傾聴して、聞いた意見をもとに次の自分の意見を相手にぶつける。この繰り返しで議論は深まります。一方的に話すだけの人は、少なくとも、企業での仕事には向きません。
ではなぜ「発言して目立て」というアドバイスが出るのでしょうか?
面接官のスキルの低さが、結果を捻じ曲げる
グループディスカッションでは、各テーブルに評価者となる先輩社員が同席するのが一般的です。
学生には、とても大人で優秀な社会人に見えていることでしょう。憧れの企業の先輩社員ですから無理もありません。
ですが、そんな彼らも、面接官としては「素人同然」だということを忘れてはいけません。
グループディスカッションのように人手が必要な選考には、人事以外の部門から駆り出されて来る社員も多く参加します。普段は人事とはまったく別の仕事をしているのですから、正しく学生の能力を見極めるのは困難なはずです。
4~5人のしかも初対面の人の話す内容を把握して、正確なジャッジを下すのは至難の業です。実はグループディスカッションは、採用選考のなかでも実施難易度の高い手法なのです。
だから結果的に、「明るく元気のいい学生」が選ばれてしまうだけの選考になりがちです。自己認知力はあるか?といったテクニカルなチェックはせず、評価者の印象で合否を決めてしまうのです。
これでは、そもそも評価者の印象に残らなかった時点でアウト、ということにもなりかねません。
「発言して目立て」というアドバイスは、グループディスカッションの、こんな実態からきています。
実態を知った上で、どう対処するかが重要
結論から言うと、「発言して目立て」は正しいことになります。
多くの企業で、正しいグループディスカッションが行われていない実態がありますので、評価者の印象に残る努力を最大限する必要があります。
しかし、上記の事実を知っていれば、「目立てなければ終わり」と思い込んで、やみくもに発言して自爆することは、なくなると思いませんか。
考えるべきは、ディスカッションが実りあるものになるために、いまこの場には何が必要かを考え、実践すること。
タイムキーパーがいないと思えば、その役割を買って出るのも良いでしょう。批判的な意見を入れて議論を盛り上げる必要があれば「逆に~」と、あえて反対意見を投げかけるのも有効でしょう。
グループディスカッションに方程式のようなものがあるとすれば、それは
「自分の能力」×「その場に必要なこと」
の掛け合わせではないでしょうか。
前者を自覚するのは自己認知力。後者はいわゆる「空気を読む力」です。
柔軟にこのバランスをとれる人が、企業からは求められています。
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