休日や深夜に電話をかけて、ブラック企業か確認する学生は、重大な事実を見落としている。
近頃の学生は、ブラック企業という言葉に敏感だ。
長時間労働や休日出勤に対して、強い拒否反応を示す。
今回は、そんな学生たちの、行き過ぎたブラック企業防衛策に警鐘を鳴らしたい。
- 休日や深夜にTELして、つながったらブラック企業??
- ワーカホリックの存在を、知っているか?
- たまたま急ぎの仕事で、休日出勤していただけかも
- 休日は、コールセンターに転送される仕組みになっているかもしれない
- 最後に:OB訪問で、ブラック企業かどうかは、だいたいわかる
休日や深夜にTELして、つながったらブラック企業??
学生が、志望企業がブラックかどうかを見極めるのは難しい。
しかし学生側からすれば、自分が入社予定の会社がブラック企業かどうかは死活問題だ。
そんな事情から、苦肉の策で、深夜や休日に会社に電話してみて、誰かが電話をとったらブラック企業判定する方法をとっている学生がいるらしい。
本来、会社が営業していないはずの時間に、社員が電話に出て応対する。
つまり、表向きは早帰りや週休2日をうたっていても、実態はちっとも休んでおらず、社員たちは長時間労働をしているに違いない、というわけだ。
一見、冴えた手法に思えるが、実はこれはとんでもない愚策である。
社会人経験のない学生には、おそらく想像力が働かないのだろう。
以下に、その理由を書く。
ワーカホリックの存在を、知っているか?
休日を大事にする学生たちには信じられないかもしれないが、この世には3度の飯より仕事が大好きで大好きでたまらない、という人種が存在する。
そんな仕事中毒の人をワーカホリックと呼ぶ。
従業員100名くらいの会社なら2~3人くらいいても不思議には感じない、程度には社会に存在しているので、学生たちが志望するそれなりの企業にはもっとたくさんのワーカホリックが在籍しているはずだ。
さて、以上の実態を踏まえて考えてみよう。
学生は、日曜日に自宅からオフィスに電話をかけている。
仮に、オフィスで誰かが電話をとったとして、ブラック企業だと断定できるだろうか。
ほとんどの社員は、ふつうに休日を謳歌しているが、一部のワーカホリック社員が休日出勤していただけ、という可能性は考えられないだろうか。
そして、この可能性に思い当たれば、もっと凡庸で、あり得そうな真実にもたどり着くことができる。
たまたま急ぎの仕事で、休日出勤していただけかも
仕事には締め切りがある。
締め切りがゆるい仕事もあれば、急な対応が必要な仕事もある。
オフィスの従業員数が増えれば増えるほど、「たまたま急ぎの仕事で休日出勤しなければいけない」人が発生する割合は高まる。
本来、休日の日であるから、鳴った電話をとるか否かは個人の判断によるところも大きいだろうが、たまたま出勤していた社員が電話に出ただけの可能性も大いにあり得る。
深夜に「オフィスの電気がついている!」というのも、同じことだ。
実際にオフィスの中に入って、社員の大多数が勤務していることを確かめなければ、本当にブラックかどうかは分からない。
それに、休日出勤した人は、後日、きちんと代休をとっているかもしれない。
もしそうだとすれば、学生がブラック判定した企業は、実はいたって平凡なホワイト企業だった、ということになる。
安易なブラック判定を理由に内定辞退などしていようものなら、とんでもない機会ロスだ。
学生にブラック企業だと錯覚させてしまう事情は、まだほかにもある。
休日は、コールセンターに転送される仕組みになっているかもしれない
オフィスで働く社員たちは休んでいるが、その間の対応をアウトソースしている場合だ。
顧客が休日にも稼働しており、365日対応が求められるような企業の場合は、休日にも電話がつながる体制が整えられていることがある。
学生が電話をかけて、「つながった」ことだけを確認して、受話器をおろしていたとすれば、コールセンターか否かの判別は難しい。
ちなみに、中小企業の場合は、終業後や休日の会社への電話は、社長のスマートフォンに転送される設定にしている会社もある。あなたが即切りした失礼な電話は、実はその会社の社長につながっていたのかも…。
あと、企業によっては新卒採用専用の電話回線を用意していて、18時以降はつながらない仕組みになっている会社もある。
と、まぁこんな具合に、電話1本でブラック判定をするのは無理がある。
学生諸君は、ブラック企業を見抜くには、結局は正攻法しかないのだと腹をくくろう。
最後に:OB訪問で、ブラック企業かどうかは、だいたいわかる
「わかる」と言っても、極度のブラックかどうかは見抜ける、くらいの精度ではあるが…。
まぁ、間違った認識でホワイト企業をブラック判定する誤認が多発するよりはマシなので書いておく。
方法はとてもシンプルで、先輩の風貌や顔色をよく見てみよう。
ほどほどに働いている会社の人なら、それなりに健康に見えるはずだ。
もしも疲れていそうなら、飲みに行くのが好きかどうかも探ってみよう。仕事に慣れてくると、2日酔いでも何とか1日凌ぐ方法を心得てくるもので、平日にも関わらず、遅くまで飲みに行ってしまう人もたまにいるからだ。
1秒たりとも残業がないか?
と問われると苦しいが、少なくともこの方法なら死ぬほど残業させられる会社かどうかは判別できるはずだ。
本気でやばい会社の人は、本気でやばいくらい疲れが顔に出ている。
まあ、そもそもOB訪問を受けつけるクラスの会社で、そこまで働かされる企業などないだろうが…。
というと電通の事件を思い出すかもしれないが、あれは厳密には過労死ではない。
電通社員の自殺は、過労ではなく上司によるパワハラ(つまり「いじめ」)の影響も大きく、過労はパワハラの副産物であったということを、よく理解しておいたほうが良い。
あと念のため補足しておくが、月40h程度の残業でブラック企業判定するのであれば、世の中の企業の多くがブラック企業になってしまう。
仕事の厳しさ、社会の厳しさそのものを「=ブラック」と誤認すると、不幸になる。