ブラック企業化を加速させる「成功ナレッジ」。
ブラック企業関連のニュースは尽きない。
むしろ年々増えているのではなかろうか。
ブラック企業にも色々あると思うけど、社員を使い捨てにしてやろう、と明らかに悪意のある真っ黒な企業もあれば、無自覚なままブラック化している企業もあるように思う。
そんな「企業のブラック化」には色々な原因があるけれど、意外なところにブラック化の原因は潜んでいたりする。
その一つが、いわゆるハイパフォーマー人材の存在。
彼ら、彼女らのあげる驚異的な仕事成果が、企業のブラック化を加速させることがある。
たとえば、会社ですごい結果を出して評価された人がいたとして、その人が「いや、これくらい普通です」といったような態度をとったとしたら…。こうした何気ない言動やふるまいがブラック化の原因となる。
なぜなら「これくらい普通」と発言した瞬間、彼・彼女たちの驚異的な成果こそが「当たり前の基準」「あるべき姿」になり、それ以下の人は「未だそこに至らない未熟者」ということになってしまう可能性もあるからだ。
結果を出した人は、もっと正直に苦労話をしたほうがいい。
自分は結果を出すために土日も返上して猛烈に働きました、と宣言すべきだ。実はポケットマネーでじゃぶじゃぶ接待した結果です、と開き直るべきだ。仮に楽して成果を出せたなら、自分の天才ぶりを声高に宣言すべきだ。
他の人にマネできないレベルの頑張りは、ちゃんとマネできないままにしておかなくてはいけない。休日返上したからこそ実現できた仕事に、後付けで大層な理由をこじつけてノウハウやナレッジにすべきではない。
本来、業務時間内の努力ではありえないレベルの「超スゲー仕事」が社内共有されて「誰にでもでき得る仕事」と理解された瞬間、現場は確実にブラック化する。
小売とか飲食だと分かりやすいけれど、前任者が派手に自腹を切って数字を粉飾していたために、後任者もそうせざるを得ないケースはあるらしい。あるいは不当な低成績に甘んじるか。
たとえばコンビニならば、どう考えてもおせちの予約がとれない立地やクリスマスケーキが売れない立地でも、自腹を切れば数字を積むことは可能だ。しかも、ベースの売上が低いから対前年で爆発的な売上の伸びを示すことができる。
個人が出世のために勝手に頑張るだけなら、何をしようが無害だ。でも、並外れた成功を企業はナレッジ化したがる。その過程で休日労働や自腹を切ったことがクリーニングされて、もっともらしい成功要因が作り上げられてしまうとしたら、不幸だ。
こうした成功ナレッジの改竄は個人レベルでも行われているし、かつてのワタミやすき家のように、社員の異常な働きを踏み台に好業績を公表する企業もある。
ブラック企業が生まれる背景には単なる悪意だけではなく、個人の能力格差や出世欲、見栄など色んなものが隠れている。
だからこそ、ブラック企業をなくすことは難しい。
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