石田衣良氏は、「君の名は。」だけじゃなく「秒速5センチメートル」も見てる説。
石田衣良氏の年頭所感 「新海誠氏と宮崎駿氏の違いは」│NEWSポストセブン
この記事を読んだ。
石田衣良氏が新海誠監督の映画「君の名は。」を批評していたのだが、その内容がポジショントークに溢れすぎていて香ばしかった。
たぶん新海さんは楽しい恋愛を高校時代にしたことがないんじゃないですか。
青春時代の憧れを理想郷として追体験して白昼夢のようなものを作り出していく、恋愛しない人の恋愛小説のパターンなんです。
付き合ったこともセックスの経験もないままカッコイイ男の子を書いていく、少女漫画的世界と通底しています。
恋愛の指南役的なポジションで売っている人なので、ついつい筆が滑ってしまったのだろうなぁと推察する。
ポジショントークが過ぎて、文章の力加減を誤ってしまったのではないか。
石田衣良氏の発言は「君の名は。」だけを見て発せられたとは思えない
ご覧になられた方はご理解いただけると思うが、「君の名は。」は極めてノーマルな青春映画である。
若者の淡い恋心がテンプレ的に表現されていると言っても良いのではないだろうか。
「君の名は。」は、ストーリー構成や絵の見せ方が秀逸なのであって、語られる青春劇の内容自体はある意味で凡庸なものだ。
表現が非凡かつ描かれる感情が平凡だからこそ、最大公約数の共感を獲得できた。
だからこそ、本作の内容だけをもってして、石田衣良氏が『(新海監督は)楽しい恋愛を高校時代にしたことがない』とまで断言していることに疑問を覚える。
実は、石田衣良氏は「秒速5センチメートル」も見てるだろ
実を言うと、石田衣良氏の推測は、当たらずとも遠からずなような気もしている。
というか、そもそも男子に限って言えば、高校生の段階では女性と付き合ったことがない率は4割くらいあるものだ。田舎で統計をとったらもっと割合は高いだろう。
石を放ればヒットするレベルには一般的な属性だ。
でも、石田衣良氏がわざわざ記事にしてしまうほどに非モテの印象を持ったのには、別の理由があるはず。
それは新海監督の過去作「秒速5センチメートル」の存在ではないか。
ネタバレになってしまうが、「秒速5センチメートル」は、主人公の男性が中学時代にイイ線までいっていた女子と転校により不通になってしまい、そこから延々と彼女のことを想い続けて青春時代がすぎさり、最後にはええ歳した独身オッサンになってしまう、という鬱展開の教本のごとき作品だ。
これを見ると、たしかに新海監督には、底知れぬ心の闇があるような気がしてくる。
不遇の青春時代を過ごしていたのではないか、と想像するに充分なエッセンスがつまった不朽の名作なのである。
実は、新海監督は恋愛強者
余談だが、新海監督は非モテどころか、むしろ恋愛強者だという事実もある。
なんと監督の奥さんは女優だ。
もう一度言う。
新海誠監督の奥さんは女優だ。
三坂知絵子さんという。
ポジショントークの業の深さ
ポジショントークの業の深さを思い知らされた一件だった。
石田衣良氏の立場で、アニメ映画の恋愛観を賞賛するというのは確かに微妙だ。らしくないと感じる。
しかしそうは言っても、恋愛小説の達人がアニメ映画の監督に恋愛ネタでマウンティングするとは大人げなさすぎる。
石田衣良氏には、新海監督のパーソナリティについて語るのではなく、「君の名は。」の恋愛観について、いまどきの若者と照らし合わせて突っ込んだ意見を書いてほしかった。