デザイナーは、いきつけの居酒屋のフライヤー(チラシ)を無料で作りがち。
すこし前に『専門職の人に「友達じゃん」を理由にタダで仕事を頼むのはお門違い』といった記事が話題になっていたときに考えたことを書く。
この問題って、ぼくとしては自業自得の部分がめちゃめちゃあると思っているし、ある意味で、必要悪だと思う部分もある。
現実問題、タダで技術を提供する専門家は多い
・いきつけの居酒屋のフライヤーをタダで作るデザイナー
・法律相談を無料で受ける弁護士
・友達の髪を切ってあげる美容師
・家探しを無料で手伝う賃貸不動産の営業
・運動会などイベントで、無料で専属カメラマンになるカメラマン
・友達の引っ越しを手伝うトラック運転手
・パーティで料理をふるまう料理人
・一般人の結婚式のVTRに出る芸人(これはちょっと違うかw)
…etc
ちょっと探せば、こんな例はアホほど見かける。
友達が多い人なら、大抵のことはタダで何とかなるんじゃないかとすら思う。
責任のない状況で、スキルを披露するのは楽しい
ふだんの仕事でほめられようと思うと、並大抵のことではない。
お金を受け取っているから、比較対象は「プロの中で優れているかどうか」になってしまう。
ほとんどの人が、さほど抜きんでた技術を発揮できず、「プロならこれくらい当然」の範疇の仕事しかできないのではなかろうか。人材広告を扱う僕もそうだ。
でも、たまに友達に頼まれて求人広告や採用関係のアドバイスなどをすると「ほぅ~~~!」と気持ちいいほどに良いリアクションをしてもらえる。
え、俺ってそんな凄かったっけ?と、見事に勘違いさせてもらえるのだ。
タダで働く専門家たちは「承認」という得難い報酬を受け取っている
それはお金なんかよりも、よほど価値のあるものだ。
お金は嫌々でも働けばもらえるけど、「賞賛」や「承認」は、欲しいと思っても、もらうことはできない。
人材業界では有名な話だけど、世界最古の求人広告というのがあって、その広告文はこんな内容だったらしい。
男子求む。
至難の旅。
わずかな報酬。
極寒。
暗黒の月日。
絶えざる危険。
生還の保証は無し。
成功の暁には名誉と賞賛を得る。
南極大陸横断のメンバー募集広告だ。
当時、数千人の応募があったと言われている。
ハローワークですら、その場で突き返すレベルのブラック求人である。
しかし、南極大陸横断の名誉と賞賛は、この上なき最高の承認に違いない。
大なり小なり、承認されることには、お金には代えがたい価値があるのだ。
そういえば夫婦仲を保つ秘訣に「ありがとう」を声に出す、ってのがあるのも似たようなもんかもしれない。
記念日にケーキや花束を買えばいいという単純な話ではないのだ。
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タダで自らの技術を提供する、各界のプロフェッショナルたち。
見かけ上はタダに見えても、案外、承認という形で報酬を受け取ってるのかもなぁと思う。
プロってさ。
こうでもしないと、マジでほめられることがないんだ。
(けなされたり否定されたりすることは多いけどね)
だから、自分の技術に自信を持ち続けることって、すごく難しい。
タダで受けると価値がさがる云々の主張も分からないことはないけれど、たまにはタダで仕事して、カジュアルに承認してもらう事も必要なんじゃないかなぁ。