投資のプロが実践する、ブラック企業の見分け方。
企業の採用意欲が旺盛で、いくつも内定を獲得する学生がふえています。
内定までいかなくとも、1次選考、2次選考…と、とんとん拍子に選考に進める学生は多いでしょう。
とはいえ、すべての企業の選考を進めていくのは時間的に無理ですから、学生たちはそれぞれの企業に優先順位をつけて、どこかのタイミングで企業にお断りを入れる「決断」を迫られることになるのです。
学生さんからすれば「ブラック企業を排除して、ホワイトな企業だけを候補に残したい…」というのが心情だと思います。
そこで今回は、投資のプロフェッショナルが語る「ブラック企業の特徴」についてご紹介していきます。会社訪問の際などに、意識して企業を観察してみてください!
- 就職は、自分という労働力を一つの企業に集中投資する行為
- ブラック企業を"見抜く"なら「就活本」より「投資本」が役に立つ
- 投資のプロフェッショナルが指摘する、ブラック企業の特徴
- 逆にこんな企業は、優良企業である傾向が強い
- 企業の良し悪しを見極める、ヒントが詰まった1冊
就職は、自分という労働力を一つの企業に集中投資する行為
ブラック企業を見分けるのに、なぜ投資のプロの意見が参考になるの?
と疑問に思うかもしれませんが、投資先が健全な企業かどうかは投資家にとっても死活問題です。
人手不足の昨今は特に、経営リソース「ヒト・モノ・カネ」の中でも、「ヒト」が重要視される時代です。
「企業を見抜く」観点で、投資のプロの意見は、就活にも役立てられる部分がたくさんあるのです。
それに就職とは、特定の一社に対して「自分という労働力を集中投資する行為」でもあります。
サラリーマンの生涯賃金は平均すると2億円とも3億円とも言われます。
将来やりたいことだったり、夢だったり、目先の待遇だったりという就活生の視点ではなく、投資の観点からその企業の将来性を冷静に見極めるのです。
経営状態の悪い企業ほどブラックになる傾向がありますから、単に業績が伸びている企業を選ぶだけでも、ブラック企業を避けやすくなるはずです。
ブラック企業を"見抜く"なら「就活本」より「投資本」が役に立つ
就活本は、一般的に「内定をとるための本」です。
企業に気に入られるためのハウツー本であり、良い会社を選ぶためのノウハウについては触れられていません。
そこで「就活=投資」と考えることで、投資に関する書籍を就活本として活用しようというわけです。
それにピッタリの書籍がこちら「投資レジェンドが教えるヤバい会社」です。
ひふみ投信という投資信託を運用している会社、レオス・キャピタルワークスの代表取締役社長、藤野英人さんの著書です。
学生さんはご存知ないかもしれませんが業界では有名な社長で、経済番組の「カンブリア宮殿」でも取り上げられました。
※番組は「テレビ東京ビジネスオンデマンド」で観られます(有料)
本のなかで、藤野さんはブラック企業を見抜くポイントについて語っています。
基本は「ヤバい会社=投資しないほうがいい会社」の意味で書かれており、投資向きの内容ですが、就活にも応用できる部分があるのでいくつかご紹介します。
投資のプロフェッショナルが指摘する、ブラック企業の特徴
Webサイトに社長の写真がない会社
社長が遊び人で「顔バレ」すると都合が悪いなど、後ろ暗い理由が考えられます。藤野氏曰く、ブラック企業の多くはWebサイトに社長の写真を掲載していないそうです。
また、一定規模以上の会社にも関わらず、Web検索で社長の名前を入れても、まったく写真が出てこない企業は要注意だそうです。
行く先々で「撮るな」「載せるな」と強硬に対応しない限りは(場合によっては削除依頼も)、SNSが盛んないまどき、Web上に写真が流出することを止めることなんてできません。これは相当ヤバイ理由が隠れていることも考えられます。
ちなみに、企業年金用の資産を消失させたことで一時世間を騒がせた、AIJ投資顧問の社長のケースでは、事件直後はネット上にまったく写真が出てこなかったそうです。
美人すぎる受付嬢がいる会社
会う人会う人が美男美女。そんな会社は、正当性な基準で採用が行われていない可能性があります。経営者が能力で判断せず外見にこだわっているということです。
そんな会社でずっと働いていくことができそうですか?こうしたスタンスは、経営にも悪影響を及ぼすと筆者は語っています。
トイレが汚い会社
企業によっては清掃業者が担当していることも多く一概には言えませんが、汚れをそのままにしていたり、チリ紙が散らばっていたりするなど、使い方の汚さはマイナス評価となります。
社員に愛社精神がなく、なにごとも「他人任せ」にして平気な人が多いと予測できるからです。いまふうに言うのであれば、「意識の低い社員が多い企業」ということです。
役職名で呼び合う会社
○○課長、○○部長と呼ぶ企業は、年功序列で縦社会。古い体質の企業であることが多いようです。
風通しのよい会社では、役職に関係なく○○さんと呼び合います。こうした企業は実力主義で、先輩を追い越して出世することも当たり前にある環境です。
どちらが良いかは一概に言えず、学生さんがどんな企業が自分に向いていると感じるか、によっても変わってくると思います。
ただし、投資の観点では後者の風通しの良い会社のほうが成長性が高いと、著者は語っています。
女子社員を「ウチの女の子」と呼ぶ会社
就職してバリバリ働きたい意思のある女性は、特に気にしたほうが良いポイントです。
女性社員を企業がどう見ているかが、女性社員に対する呼び方に現れます。管理職以上の人が「ウチの女の子は…」といった表現をする会社は、女性社員をプロフェッショナルとしてあつかう意識が低い可能性があります。
ただし場合によっては、愛情ゆえにフランクな表現として「ウチの女の子は…」という表現が出ている場合もあるので、話の流れやその人の態度もいっしょに見て判断するようにしてください。
社長や管理職が傍にいると、社員に緊張が走る会社
社員が社長や管理職にある程度気を遣うのは、自然なことではあります。
ただ、中にはその変化がスイッチのOn/Offのごとく、あからさまな企業もあります。社員の意識が「内」に向いていることの現れです。
こうした企業は、社内に気を遣いすぎるあまり、お客様本位の商売ができていないおそれがあります。社内政治にばかり関心が向いている、いまどきの学生が「つまらない企業だ」と感じる典型的なパターンです。
こんな企業に入社したらどうなるでしょうか?
社会人として働いたことのない学生さんにも、容易に想像ができてしまうと思います。
※1つでも当てはまったら「即ブラック企業認定」というわけではない
ちなみに、ご紹介したポイントは、「一つでも当てはまっていたら即ブラック企業認定」というわけではありませんのでご注意ください。
あくまでもブラック企業を疑うための目安です。就活生のみなさん自身が感じる直感との組み合わせで総合的に判断することが前提です。
ただし、いくつも当てはまっている場合は、要注意ですので、もし内定承諾するのであれば、事前にしっかり情報収集したほうが安心ですね。
逆にこんな企業は、優良企業である傾向が強い
当てはまっていれば優良企業である可能性が高いポイントについても、就活に関連しそうなものを少しご紹介します。
ビジョン浸透に力を入れている会社
社長がビジョンを熱く語ることができ、社員の一人ひとりに企業のビジョンや理念が浸透している会社は、生産性も高く伸びる傾向が強いようです。
お給料や休みだけでなく、社会貢献を意識する若者がふえていますから、人材獲得の面でも、今後こういった企業が有利になることは想像に難くありません。
就活の観点でもう一歩踏み込んで考えるのであれば、ビジョンや理念が大切にされていること+α、あなた自身がそれに共感できるかどうかも考えたほうが良いです。
社内にビジョン・理念が浸透している場合、その志に共感できなかったときの居心地悪さは、通常よりも大きくなってしまうからです。
Webサイトに社員が多く載っている会社
就活生の方にとっては、特に重要なポイントです。
社員を仲間として大切に扱う企業には、この傾向が多いようです。反対に社員の写真が一切載っていない企業の場合は、社員をモノのように扱っているのでは?と疑ってみることも必要です。
これは採用の観点から言っても理にかなった考え方です。
離職率の高い企業では、担当者が社員の写真をあまり使いたがりません。なぜなら退職者が出るたびにWebサイトの写真を差し替えるのは手間だし、場合によってはお金もかかるからです。
Webサイトに役員の写真が載っている会社
写真があるからイコール優れた企業と断定はできませんが、「役員の写真がある=目には見えない優れた企業文化がある」傾向があるようです。
株価の伸び率にも1年間で70%以上の開きがあります。
企業の良し悪しを見極める、ヒントが詰まった1冊
ご紹介した「投資レジェンドが教えるヤバい会社」は、ファンドマネージャーである藤野さんが30年近く企業調査し、6500社以上の社長と会った経験をもとに書かれた本です。
元は投資向けの書籍ではありますが、掲載されている判断軸には、今回ご紹介した内容の他にも、まだまだ就活に転用できそうなものがありました。
売手市場という、学生が「選ぶ立場」になることが多い時代には、内定をとるノウハウよりも、良い会社を選ぶためのノウハウこそが必要です。
企業選びに悩んでいる学生さんは、ぜひ参考にしてみてください。