合説のオワコン化が急速に進行中。
合同企業説明会。通称「合説」。
大きな会場を貸し切って、そこに多数の企業と学生が集まる出会いの場だ。
毎年、新卒採用の広報解禁とともに大規模な合同企業説明会が開催され、リクルートスーツを着た学生たちの様子がメディアなどでも報道されている。
合説は、一日でたくさんの「企業を見られる」「学生に出会える」場として、学生からも企業からも一定の支持を集めている。
ただ、ここにきて合説に異変が起き始めている。
- 合説に参加する企業の質の低下
- なぜ不人気企業や零細企業が、合説に積極参加するのか?
- 学生にとって、合説の有用性はどんどん低下している
- 合説でブラック企業(零細企業)に騙されない方法
- 超小規模の合説?的なサービスが増えてきている
合説に参加する企業の質の低下
説明はあとでするとして、まず起きつつある現象について書く。
学生にとって合説の場が、どんどん玉石混合になってきている。
大手企業や優良企業が参加する一方、いわゆる「不人気企業」や「零細企業」の合説参加が急増している。
学生目線でみたときに、ノイズとなる邪魔な情報が増えているということだ。
何も考えず企業の担当者の呼び込みに連れられて話を聞いていると、ハズレ企業ばかりの話をきくことになる可能性が高まっている。
なぜ不人気企業や零細企業が、合説に積極参加するのか?
理由は合説の参加費用にある。
合説はリクナビやマイナビなどの大手が主催する大規模なものから、その他企業や団体が主催する中規模・小規模のものまで様々ある。
参加費は高いもので50万円~80万円くらい。
安いものだと10万そこそこで参加できる。
合説はナビサイトよりお買い得!?
一方で、就活といえば定番の「リクナビ」「マイナビ」への掲載費用は、定価だと80万円~100万円ほどかかってくる。
合説よりもナビサイトに掲載する費用のほうが割高なのだ。しかも、費用対効果の面でも合説のほうが優れていることが多い。
ナビサイトに掲載する企業数は、たとえばリクナビであれば3万社ほどと、ここ数年で倍増している。
ただでさえ少子化で学生の数が少ないのに、採用したい企業は増える一方。結果、知名度の低い企業や不人気業種には、掲載しても学生からのエントリーがほぼない、という事態が起こっている。
リクナビ・マイナビともに、高い費用を払って掲載したにも関わらず、エントリーは数十名で、説明会にはほとんど来てもらえなかった企業が実際にゴロゴロある。
合説は「くどけそう感」があるので、参加費用を払うことに抵抗がない
ナビサイトだと学生の流れが目に見えない。
エントリーがないと「本当に学生はナビサイトを使っているのか?」と騙された気分になってしまう。
しかし、合説はその点が非常に明瞭だ。なぜなら自分たちの目の前を学生がゾロゾロ歩いている。
確実に学生は、いる!
あとは学生に積極的に営業をしかけて、自社の説明会や選考に進んでもらえればこっちのもの!と、多くの不人気企業・零細企業は考える。
実際成果も出ている。効果ゼロのナビサイトに何十万も払うくらいなら、内定を出せそうな学生に数名出会えただけでも、企業にとってはじゅうぶん価値がある。
ナビサイト上では無視される不人気企業でも、人事担当が人間力を武器にガンガンくどけば、篭絡される学生は一定数いる。
たとえばこんな流れだ。
大手企業のブースに座って周りの学生を見るとみんな優秀に見えて…、人事担当者との距離も遠い……、一方的に説明を聞くだけ聞いて講演は終了。
終了後、意識高そうな一部の学生が人事担当者に積極的に話しかけにいくのを横目に(自分には無理そうだなぁ……)と学生は不安に思う。
そんなときに優しく声をかけてくれて、自分の話にウンウンと興味をもって頷いてくれる人事担当者がいたらどうだろう。社会経験がなく素直な学生ほど、一撃で心を射抜かれてしまうのである。
学生にとって、合説の有用性はどんどん低下している
上述したように、企業からの合説ニーズは高まっている。
するとどうなるかと言えば、合説の開催数が増える。
開催数が増えたらどなるかと言えば、たとえば以前は80社の枠のうち40社が学生にとっての優良企業だったのが、いまは優良企業は20社くらいになっていたりする(たとえ話なので割合はいい加減だが、質が薄まっているということが言いたい)。
大手企業は体力があるので、開催数が増えたら増えただけ参加数を増やすかもしれないが、中小の優良企業は参加数を増やせないので、新しく増えた参加枠にはどんどん質の低い企業が入り込んできているのが現状だ。
ナビサイトが主流だった頃は、まずナビサイトにお金を使って余力のある企業が合説にも出ていた。いまはナビサイトが役立たずだから、そのお金で合説に出てワンチャン狙おう、という零細企業も増えている。
以前なら、大手企業の説明目当てで参加した合説でたまたま知名度の低い優良企業に出会って、就職ということもあり得たが、いまはその確率が低下している。
逆にブラック企業に出会う可能性が高まっており、あまり無防備な気分で参加すると危険な場所となっている。情報収集のために1回、2回くらいはぜひ参加して欲しいが…、実態は厳しい。
合説でブラック企業(零細企業)に騙されない方法
完璧な方法ではないが、せっかくなので少しだけ。
参考にしてみてください。
不必要なまでに、人員を大量導入している企業はブラック傾向
合説は、大手企業の大型ブースは別として、だいたい2~4人くらいで運営している企業が一般的だ。
でも、たまに(というか結構見かけるが)若手社員を大量に参加させている企業がある。居酒屋の呼び込みのごとく、若手社員が学生に声をかけて自社のブースに連れてくるのである。こういう企業はあまりおススメできない。
就業時間中にもかかわらず、大量の社員がなぜ応援にこれるのか?
を考えてみて欲しい。
⇒遅れた仕事は、あとで残業でカバーする
⇒社員一人あたりの生産性が低いので、たくさん呼んでもコストがかからない
さらに言えば、
⇒入社したら、あなたも合説で呼び込みをやることになる
⇒会場によっては過度な呼び込みを禁止しているところもあるので、ルール順守の意識が低い企業である可能性も否定できない
⇒強引な呼び込みをする勧誘スタイルを是としているのであれば、それがその会社の営業スタイルに近いとも考えられる
ということだ。
強引な呼び込みを避ける学生は多いが、あれは正しい対処だと思う。
もちろん、そういうお祭り的な雰囲気こそが自分にマッチしているという学生は、話を聞いてみたらいいと思う。相性の問題だから。
人事の人がらの良さと、企業の良し悪しはイコールではない
学生は肝に銘じてほしい。
どんなに人事が良い人でも、その企業の業種や仕事内容に疑問を感じるなら、ぜったいに入社してはいけない。人事の人とあなたが、一緒に働くことはほぼない。
人事と現場の人で、人格が180°違うことはザラにある。人事はあくまでも内勤部門の人。戦場で言えばナイチンゲールみたいなもので、前線で戦う屈強な営業部隊とは別物だと思ってほしい。
就活相談に熱心にのってもらっている内に…、説明会に行き…、内定へ……、なんてこともあるようだが、本心で仕事内容に興味を抱いているのでなければ、立ち止まって考え直したほうがいいと思う。
合説で、人事の人がらに惹かれる学生は多いという。しかし、そこには落とし穴もあるのだと知っておくことは大事だ。
目の前の企業、リクナビやマイナビに掲載してるか?
掲載しているから良くて、掲載してないから悪いわけではない。
ただし「合説に出ているのにナビサイトに掲載していない=不人気企業の可能性」があることを、念頭に入れて話を聞いた方がいいと思う。
ナビサイトに掲載してもエントリーがないから掲載しない会社
⇒黙ってたら誰もエントリーしないような会社
という可能性も否定できない。
業種的に斜陽であるとか、労働時間が長くなりがちだとか、学生に避けられる何らかの要素を孕んでいないか、慎重にチェックしたほうが無難だ。
ナビサイトの内容と、人事のプレゼンの内容が異なる場合も注意
あとは、ナビサイトに掲載されていた場合は、書かれている内容と人事がプレゼンテーションしていた内容が一貫しているかもチェックしておいた方がいい。
違うことをアピールしていたのであれば、そこには何らかの採用意図があることもある。
たとえば、ナビサイトにはありきたりなメッセージを載せておいて、合説では本当に採用したい層に向けて特別な話をしていることがある。
単に採用ターゲットを絞っているだけのこともあるが、採用を有利にするために都合のいい部分を強調している可能性もなくはない。
人事が、ナビサイトで主張していないことを話し出したら、注意深く聞いておいたほうが良い。
超小規模の合説?的なサービスが増えてきている
大規模の合説が玉石混合で質が低下する一方、参加学生と企業をしぼった少人数性の出会いの場が増えてきている。
なかには私服で食事をしながら、ざっくばらんに人事担当者と話せるようなカジュアルなイベントもある。
たとえば有名なものだとニクリーチなどがそう。
ニクリーチとは、人事担当者とお肉やお寿司など、美味しいものを食べながらのんびり話しませんか?
という、いわば超小規模の説明会へのお誘いをしているサービスサイトだ。
スカウト方式だが学歴不問なので、落ち着いた雰囲気で、しっかり人事担当者と向き合って考えたい人には、この手の小規模で開催されるイベントに参加してみても良いかもしれない。
ただ、この手のサービスも、サービスがリリースされた当初は優良な企業が多く集まるのだが、サービスがたくさんの企業に拡販されていく過程で、全体のレベルが低下してしまう残念さはある。
いま流行りのオファー型の就活サイトなども、会員数と登録企業が増えるにつれて、どんどん玉石混合になりつつある昨今、学生には企業を見極める目を養うことが、ますます求められている。