無料のスマホアプリ「緋染めの雪(ノベルゲーム)」感想|ネタバレ感想も
「緋染めの雪」というスマホアプリ(ノベルゲーム)を遊びました。
たまたま見つけて、雰囲気がいかにも好きそうなテイストだったのでダウンロードしました。2015年ごろに発表されたゲームのようです。
これ全編無料で遊べるのですが、非常に面白かったので紹介します。
ノベルゲームは好きだけど、普段コンシューマーやPCゲームしかやりません、という人にもぜひおすすめします。
※下の方にはネタバレ感想も置いています。
あらすじ(公式より)
差出人不明のメールを受け取り、緋ノ山に登る【真由】。
目覚めると見知らぬ誰かの遺体と共に、雪洞に閉じ込められていた【瞬】。
2人の主人公を切り替え、ビデオカメラの録画と再生を駆使して、緋ノ山に眠る「罪」に迫る雪山ミステリー。
↑こんなシナリオです。
僕はノベルゲームの設定として、ミステリーも好きだし、山奥も好きなので、このあらすじを見た段階でとりあえずDLしてみようと思いました。
この設定に惹かれる方なら損はないと思います。
感想(ネタバレなし版)
謎だらけの状態からスタートして、徐々に事実が判明していく過程が見事でした。
途中でミスリードさせるような個所があって、その誤解が解かれることで、明らかになりかけていた気がした謎が、さらに深まってしまうなど、まぁネタバレなしで書こうとすると何言ってんだという話にしかなりませんが、読み応えのある展開で最後の方は結末を読まずに寝れない状態になってしまいました。
結末は完全なハッピーエンドではありません。でも、なぜそうなってしまうかの布石が、途中で何度も出てきているんですよね。思い返せば。だから納得せざるを得ないといいますか。ただただ、ありがとうと感謝しか感想が出てこないような終わり方と言いますか…。余韻のある終わり方をします。
以下、iOS版とAndroid版です。
感想(ネタバレあり版)
ということで以下からネタバレの感想です。
未プレイの方はご注意ください。
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実は姉妹がいたとか、名前の印象で性別をミスリードさせるとか、一個一個の手法は古典的なんだけど、あとからふり返ってみると、作中にはありえないほど多重に誤解の罠が張り巡らされていたような気がしています。
雑に並べるとこんな具合に。
「瞬=蔵前=二階の男=ユウキ=優希=大人雪子=子ども雪子=人形=雪子=香澄」
「=」は必ずしも同一人物という意味じゃなく、そうと誤解させるような展開もあるということなのですが…。よくもまぁこれだけ被せられたものだなと驚きます。
誰が誰なんだかはっきりとしない状況が、最後の最後までずーっと続くので、読みながらひたすら考え続けるしかない構造になっていました。
これが夢中になって読んでしまった要因だろうと思います。まさに雪山の遭難者のように、思考が同じところをぐるぐるぐるぐるさせられる展開でした。
主なロケーションは雪山と山小屋と老人のすんでいた家、それと土蔵くらいでしょうか。場面転換はほとんどない代わりに、誰が誰なのかという正体の種明かしと過去に村で何が起こったかという事実の種明かしによって、人物に対する善悪の印象が180度入れ替わり、そのたびにこれまで読み取ってきた情報の意味が何度もどんでん返しされることで、シナリオの大きな波が作られていました。
たとえば、二階の男がユウキになって、蔵前になって、雪子に暴行した犯人になって…。種明かしとともに、読み手の認識がどんどん移り変わっていくことで、物語全体の景色が違って見えてくるわけですね。
ポチポチ読みながら5分から10分に1回くらいは価値観が揺らぐような種明かしが飛び出してくるので、グイグイ引き込まれました。
結末はちょっぴり悲しいのですが、思い返せば香澄さんはすぐ具合が悪くなったり、息を切らしていたことに思い当たります。あぁそうかと。
香澄さんが思いをとげたという意味では、嫌な終わり方ではないのですが、これが完全なハッピーエンドとも思えず、やるせない気持ちになります。
クリア後には、新たに香澄さんの視点でプレイが可能(プレイヤーの認識によって)、というゲーム構造が粋ですね。
このゲームを見つけたのは本当にたまたまだったので、偶然の出会いに感謝です。