「アザーライフ 永遠の一瞬」映画感想(ネタバレあり)
「アザーライフ 永遠の一瞬」の視聴メモです。
いきなりネタバレするので、未視聴の方はご注意ください。
あらすじ
長い時間を凝縮させ、短時間で実体験ができるようになる薬を開発したレン。ところがこの可能性を秘めた新薬の使い道について共同開発者ともめてしまい…。
SF好きのツボを押さえた展開
前半は、ちょっとテンポ遅めで息苦しいのですが、禁固刑1年が終わって、実は仮想現実ではなくプレハブでした、というサプライズ演出がなされるタイミングから(実際は仮想現実なんだけど)、急速に自体が進展してそこからは怒涛の解決編という感じで、あっという間でした。
一瞬、えっ!実はリアルなの?と思わせておいて、やっぱり仮想現実だという二重構造の演出は、観る人を引き込む重要なポイントだったと感じています。ただ、映画サイトの感想を読んでいると、ここで物語の流れを見失った人が、かなり出てしまっていたようです。
SFモノの作品を見慣れている人にとっては定番のやり口で、思わずニヤリとしてしまうところなのですが、見慣れない人にとっては複雑に感じられるのかもしれません。
レンが現実世界で、弟の意識を取り戻すことを諦めるのはなぜか?
個人的に、しっかり備忘録として書いておきたいのは、最終的に、レンが現実世界で弟の意識を取り戻すことを諦めるのはなぜか?
ということについてです。
レンが弟の意識を取り戻すのを諦めてしまった直接の原因は、仮想現実内で、弟に例の黒い目薬を使い、結果的に弟を死亡させてしまったことです。
この点について、もう少しレンの心情を掘り下げて自分なりの解釈を書いてみます。
仮想現実のなかで、レンは弟に目薬を使い、弟は一瞬意識を取り戻したかのように見えました。しかし、その直後発作を起こして死亡してしまいます。弟の亡骸とともに一夜を明かしたレンは、弟の死を受け入れます。
開発した目薬の失敗と弟の死について、レンが薬により疑似体験したことが、最終的にレンの決断に影響を与えていると推測できます。作中でも、疑似体験は脳にとっては、実際の体験と等しいものだと説明されていました。
レンは仮想現実で弟の死を経験してしまったが故に、現実世界でもう一度、薬を弟に試す動機を失ってしまったのかもしれません。レンの認識の中では、「もう終わったこと」「気持ちの整理がついたこと」になっていた可能性は十分にあります。
さらには、「弟が目覚めることを望んでいない、とレン自身が悟った」とも考えられます。海岸で静かにほほ笑み、自らの足で海に入っていく弟の姿は、彼の「目覚めない」「過去は変えられない」という意思を投影していたようにも受け取れます。
長年の悲願だったはずの、弟を救うための研究について、レンは疑似体験を経ることにより結末を悟り、現実で試したわけではないにも関わらず、納得してしまっていることには背筋が寒くなります。これはちょっとしたホラーですね。
疑似体験によって「失敗する機会を失う」のは、人間にとって幸福なのか不幸なのか…、どちらなのでしょうね。
そんなことを考えさせられたりもしました。