売手市場なのに、1社も内定を取れない学生がいる単純な理由。
売り手市場ってどこだ!100社エントリー、半数は就活苦戦——“学生視点”サービス起業も | BUSINESS INSIDER JAPAN
新卒について書かれた記事を見つけたので書きます。
売手市場なのに内定がとれない学生の話が書かれていました。
いまどきの学生さんの中には、売手市場がどこにあるか分からない人もいるらしいので、さくっと簡単にお伝えしておきます。
困っている方の助けになれば幸いです。
売手市場はここにある!
まずこちらのグラフをご覧ください。
リクルートワークス研究所というリクルートの調査機関が出しているデータです。
2018年卒の新卒の求人倍率が示されています。
http://www.works-i.com/pdf/170426_kyuujin.pdf
ご覧いただくと一目瞭然なのですが、従業員300人未満の企業の求人倍率がずば抜けて高く、それ以外のセグメントではそこまで求人倍率は伸びていません。
むしろ、大手になればなるほど、逆に求人倍率は下がっています。
つまりニュースで盛んに報道されている「売手市場」というのは、「中小零細企業でもよければ内定は取りやすいぜ」という意味です。
学生さんが憧れる大手企業への就職は依然として狭き門です。
では、なぜ大手企業は必死に募集しているのか
いやいや、でも大手企業も採用に必死だというニュースもあるじゃないかという声が聞こえてきそうです。
リクルーターを大量動員して、学生を口説くのに必死に見えますね。
そうなんです。
大手企業の採用意欲が高いのは事実です。
ただし、大手企業が必死に採用活動している理由は簡単で、「ごく一部の優秀な学生」を大手企業同士で取り合いしているだけなんです。
東大・京大・一橋とか。早稲田・慶応とか。他にもあるけど、引っ張りダコなのは、ほんとごく一部の大学群だけです。
記事の中で慶応の経済学部の子がメーカーの選考で落とされまくっていましたが、メーカーって、営業職でもできれば理系で採用したいと思っている会社が多いからかもしれませんね。理系学生の争奪戦も激しいですから。
大手企業の求人倍率が下がったのは、身の程知らずの学生が増えたせい
世間では売手市場だという風潮があって、ランクの低い大学生でも「俺にもチャンスがあるんじゃないか」と勘違いして、大手企業ばかりをエントリーしまくります。
一方で、1社あたりの採用予定人数や新卒採用をする企業は増えているのに、学生の1社あたりのエントリー数は減っているので、人事は保険をかけて1次選考ではゆるめに多くの学生を通過させます。
結果、たくさんの学生が就活初期段階では「順調に選考が進んでいる。就活楽勝。」となるわけです。
ただ、企業の求める水準は下がっておらず、むしろ上がっているので、2次選考、3次選考と進むにつれてバラバラと落選していきます。
順調に進んでいたはずなのに、3次選考で全部落とされた。
とかいうのは、そのパターンにもろにはまっていると思います。
人事側も、「選考」をするためにある程度の頭数をそろえないと体裁が保てませんからね。言い方は悪いですが、優秀な学生に対する「当て馬」にされてしまった可哀そうな学生がたくさん出たのでしょう。
結論:売手市場なのは限られた業界 or 優秀層にとってだけ
最後にこちらのグラフも付けておきます。
おなじくリクルートワークス研究所より。
いま激熱なのは、建設業と流通業です。
あっちこっちにタワーマンションが建っています。ビジネスホテル建ちまくりです。
そして、大手企業がこぞって物流倉庫を作っています。
クロネコヤマトの人手不足ニュースもしょっちゅう見ます。
コンビニもなり手がいなくて、新卒学生をオーナーに迎え入れるなんていうニュースが出ていたくらいです。
建築士の資格が必要だったり、長時間労働が常態化していたり、、、容易い仕事ではありません。
残念ながら、就活生のみんなが大好きな商社やメーカーは、特に売手市場ではありません。
銀行は人気企業ランキングからは転落しましたが、そのぶん大量に採用枠を減らすそうですし、いまこそチャンスと逆張りする学生も増えそうです。
それに元々の採用基準が下がるわけでもないので、結局入るのは大変です。
企業の人気は2極化しているので、みんなが入りたそうな会社ばかり受けていると全滅することも普通にあり得ます。
求人倍率が激増してるのは従業員300名未満の中小零細企業ということをお忘れなく。
あと気をつけてもらいたいのは、中小企業はなにも新卒で絶対とらなければ死ぬとか思ってませんよ、ということです。
使えない新卒をとるくらいなら、中途採用でもしようかなー、ハローワークに求人出しとこかー、てな発想の企業も多いです。というか大半はこっち。
選考ドタキャンしたり、折り返しの電話をめんどくさいからといって、2~3日寝かしたりするなど、舐めた対応してたらガッツリお祈り食らって、プライドが傷つけられることこの上なしです。
それと広告系の会社を受けて落ちまくる学生さんに言いたい。
広告の会社を受ける学生って、我こそは!とPRに自信のある猛者ばっかりなのです。
集まっている学生が本当に優秀かどうかはさておき、こと面接や自己PRとなれば、その能力はずば抜けた人間が集結しています。
そりゃ平凡な人間が何十社受けても落ちるのは道理。。。
個人的には、学生さんには、大手とか中小で一喜一憂するよりも、業界と職種の選定をもっと一生懸命にやってもらいたいです。
銀行がいまオワコンになりかけてるじゃないですか。
第二、第三の銀行はどこなんだというのを見極めて会社を決めるほうがよほど良い人生を送れると思いますよ。
業界全体が伸びていたら、中小企業でも待遇は良くなるし将来的に転職の可能性も広がります。
広告業界のように人気だけど市場の成長がなくて競争の激しい業界は、トップのD社でも長時間労働が問題になったりします。それだけ厳しい世界なんです。
そこそこ稼いで、そこそこ余暇を楽しんで、という平凡な幸せを手にしたいなら、大手に入ることよりも、むこう10年・20年くらいを見据えて、勝てる業界・勝てる職種を選ぶことに集中したほうが良いです。
それこそが最高の就活対策なんじゃないかと、人材採用を通じて多くの企業の状況を見ている僕なんかは思うのでした。